新書体レビュー:「すずむし」(2014)

新たに配信を開始した書体をご紹介するこちらのコーナー「新書体レビュー」。

記念すべき第1回目は2014年リリースの
すずむし
です!
この「すずむし」は、一般公募から生まれた書体ということをご存知でしょうか?
2012年に開催された書体のコンテスト、モリサワ「タイプデザインコンぺティション 2012」和文部門で、モリサワ賞 銅賞、明石賞、ファン投票1位と3つの賞を受賞した書体なのです。

 

受賞者の豊島晶さんが「落語や小噺のような、下町の人情的で温かみのある世界観で制作した」というこの書体は、たくさんの墨を含んだ筆で書いたような、ふくよかで瑞々しい点画が親しみを感じさせる、かわいらしいデザインが特徴です。
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日本語の書体デザインといえば、原稿用紙のマス目に文字を書くように、真四角の中に規律正しく描かれることが一般的。

ですが、この「すずむし」は、あえて正方形にまとめない文字の設計が、アンバランスながらも、文章にしたときに軽妙なリズムを生み出します。漢字、ひらがな、カタカナの微妙な大きさの違いも相まって、まるで文字が動き出しそうな雰囲気を持っています。

漢字も一見ゆるやかな印象ですが、メリハリの効いた縦と横のラインと、しっかりと作り込まれ細部によって、文字の形がはっきりと浮かびあがり、読みやすさとデザインを両立しています。
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他のデザイン書体と比べてみました↑

上は軽妙でかわいらしい印象の「はるひ学園」、下はぷっくりとしたふくよかな「プリティー桃」です。いかがでしょうか。

その個性が光る「すずむし」は、親しみやすさ、かわいらしさを演出したいときなど、子どもや女性向けの媒体はもちろん、昔ながらの情緒を感じさせる和のデザインとも相性抜群です。
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そんな「すずむし」の作者である豊島さんも登壇する特別セミナー「タイプデザイナーの視点」が、3月20日(金)に東京・秋葉原で開催されます。書体デザイナーやエンジニアの方々による、フォント制作の舞台裏や最新トピックの講演です。ここだけのエピソードも盛りだくさんです!
講演内容やお申し込みはこちらから

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(サカモト)